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ざぼんの皮 2004年 07月


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Jul.25,2004 (Sun)

映画『茶の味』

公式サイト

 これまで私が見てきた、記憶にあるありとあらゆる映像作品の、どれよりも素晴らしい映画だった。オールタイムベスト1。決して大げさな話ではなく、本当に心の底からそう思う(っても、私の映像経験値は非常に低いので信用ならんか)。

 これが単館上映だなんて、あり得ないよ!! とにかく、見ることができる環境にある人は、今すぐ映画館へGOだ。予備知識はなければないほどいいだろう。私は映画の予告編しか見ていなかったので、それも幸いしたと思う。どこへ向かうのか全く予想がつかない物語、繰り出される驚きの映像、絶え間ないギャグ、過不足なく研ぎ澄まされた台詞、言葉よりも雄弁に物語る美しく懐かしい景色、それら全てに込められた様々な感情を、その場でなにも考えず、素で感じるのが一番だと思うから。

 以下は、見に行くのなら読まなくていいけど、それじゃあさっぱり内容がわからないヨ!という人向けに。

 特に見て欲しい人→いでさん、向井さん、u-kiさん、おおたさん、風野ドクター。それぞれ全く違う個所を、全く違う意味合いで。私よりも多くの情報と意味と感慨を受けとめられると思うので。

  • これは究極の中高生男子映画である。
  • これは究極のハイパーリアリズム映画である(なんだそれ)。
  • ちっとも難解じゃないぞ。ものすごく易しいぞ。つーか、「全てがそのまんま」だ。
  • おたく必見。
  • 出演者も凄いぞ!!(いや、ホントに。素で見て驚いてくれ)
  • 幸子超カワイイ!! もはや犯罪的。ヒロインの土屋アンナと似た傾向の顔立ちなのはどうかと思うけど(キャスティングした人は、バタ臭い顔が好きなのかもと思った)。
  • 音楽もいいぞ、特に我修院達也!!

 ラストは拍手で!(今日一番最初に拍手したのは私だ!) はあああ、あと2回は見に行くね、絶対。

映画『こまねこ』

公式サイト

 『茶の味』のおまけで流れた。この可愛さは反則……ッ!! 5バージョンもあるのか……。他のもみたいぞ。

去年の今ごろ……

Jul.26,2004 (Mon)

映画『茶の味』の何がそんなにいいのか。

 繰り返すけど、前知識なしに見るべきだから。前知識のあるなしが映画の価値を左右するわけではない。でも、本当に、全然印象変わっちゃうと思うから。絶対に損しちゃうと思うから。余所のサイトで見かけても、目をつぶって走り抜けて欲しいぐらいだ。

 以下、ネタバレです。たいしたことは書かないけど(見てない人には意味不明程度)、これから見る人は絶対に見ないで下さい。とりあえずメモ。

  • 群像劇的な良さ。
  • 家族が、同じ時にいながら、違う時間の流れの中で、全く違う現実を生き、社会生活を営み、他者と関係している。それぞれが見ている同じ場所の風景が、それぞれ全く違っているってことを、非常にさりげなく完璧に描いてくれている。当たり前のことなんだけど、当たり前が素晴らしい。
  • でっかい自分に見つめつづけられるという風景は、客観的に見ればすごくシュールなんだけど、幸子的にはリアルなのだ。ものすごく現実的で差し迫った問題なのだ。だから必死に鉄棒する。その必死さがすごく良かった。
  • その意味でも、大人たちが最初、一体何をしているのかが語られないことは、非常に重要だと思うのです。何かぱらぱらしている母(仕草と、紙の上部のパンチ穴を見ればわかるのだが)、それと一緒によくわからないポージングをしている祖父、ぶらぶらしてプー太郎にしか見えない叔父、結構真っ当そうなんだけど仕事は不明な父。イマイチ血縁関係がピンと来ない彼らの関係(あそこは母の実家で、父は婿養子なんだよね)も含めて、観客は、別に畑耕しているわけではなさそうだなあ、ぐらいの想像を働かせながら(田舎だとこんな年齢の男のプーがOKなんだー、と浅野君を見ながら考えていた)、漠然と疑問を感じつづけ、物語途中で彼らの正体が順に明かされた、その瞬間がイイ!! 今まで「変な人」としか思えなかった登場人物の内面が、ぐわっと観客に開示される。彼らが見ていた風景が、観客にも、意味を持ったものとして見えるようになる。これはすごく計算され尽くした演出だと思う(いちいち「うわッ」と思わされる脇役を配置しているし)。絶対にこれは知らない方が楽しめる。最初からおじいの正体とか、母が何やっているのかを知っていたら、前半のシーンの見方が全然変わっちゃう……。
  • そして、これらのことを台詞で語らせないこと。絵と、物語の運びで表現し、説明しつくしてくれている。
  • さらに、非常に時間の使い方が効果的。「イゴッ! イゴッ!!」のシーンは、あの長さが、ハジメのただならぬ喜びぶりと興奮と、あほらしさを伝えてくれる。浅野と八百屋のシーンも然り。結果として、全体で2時間半近い上映時間になってしまったけれども、時間の一粒一粒に意味が込められていて、無駄なところはなかったと思う。むしろ、終わりが来るのが惜しくて惜しくて。
  • だからこそ、予想がつかない展開がまた効果的なんだと思う。いつ終わるかわからない、次に誰の話が始まるかわからない、一つのシークエンスにしたってどう続くのかわからない。場面場面の意味に加えて、意味と無意味を迷走する時間の「流れ」そのものにも意味があるってことだ(うまく説明できないけど)。映画にとって、「間」は勿論だけど、「時間」も重要な素材なんだよなあ。
  • それにしても、ハジメのダンスィっぷりは素晴らしかった。
  • おじいの部屋のシーンは、思い出してもジーンと来る。雨の中をたったか先に行って、パッと振り返る姿の楽しそうなこと! おじいに見えた雨の田んぼ道はあんな風に幸せそうに輝いていて、ハジメはあんなに楽しそうで、サチコはすごく一生懸命で、息子は……多分いつまでたっても「息子」だったんだ……(これも、おかしなおじいの父親としての愛情を見せつつ、映画には映らなかった時間の奥行きをぐんと広げてくれるという、非常にいい演出だと思う)。
  • 田舎青春ドラマ的なベクトルで『下妻物語』を、父と子、語りと視点のリアリズムのベクトルで『ビッグ・フィッシュ』を、同じ方向性で、はるかに凌駕する映画でした(私にとっては)。
  • とにかくギャグがことごとくツボだったのは幸せでした。が、このノリが合わなければ、恐らく酷い苦痛の2時間半なのだろうと思う。
  • そしてとにかく素晴らしいキャスティング。さりげない演出。良い脚本。風景、ライティング、アニメ、CG、音楽、何もかも。基本的なことがきちんと整っていて初めて出せる奥深さだと思うのです。いやホント。
 まだ沢山ありそうだけど、思い出したら追加しよう。

去年の今ごろ……

Jul.27,2004 (Tue)

筒井康隆『旅のラゴス』

「旅のラゴス」 筒井 康隆
サイズ: 16cm 発行: 1994/03 価格:
ISBN4-10-117131-9
『北から南へ、そして南から北へ。突然高度な文明を失った代償として、人びとが超能力を獲得しだした「この世界」で、ひたすら旅を続ける男ラゴス。集団転移、壁抜けなどの体験を繰り返し、二度も奴隷の身に落とされながら、生涯をかけて旅をするラゴスの目的は何か?異空間と異時間がクロスする不思議な物語世界に人間の一生と文明の消長をかっちりと構築した爽快な連作長編。』

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 実は(といういか)、筒井康隆はほとんど読んだことがない。中学時代に、恐らく(覚えてないけど、鶴書房系の)ジュブナイルが1、2冊、あとは『エディプスの恋人』『七瀬ふたたび』を(この順番で)読んだきりじゃないかな。『家族八景』は未読。一度堀ちえみのドラマをちらりと見かけたきり。これは、たまたま持ち歩いていたジーン・ウルフ『拷問者の影』の残りページ数が心許なかったために、出先で急遽購入したもの。

 結論から言うと、ちっとも面白くなかった。悪い意味で、「夢のようなお話」だった。ということで、以下ネタバレ。

願望充足系? うんうん、こういう風に生きられたらイイね、とは思うけれども、それこそ「夢のような」という感じで。ふらふらと自由気ままに旅をしながら、その人の良さ(そうに見えるふるまい)で行く先々のひとに受け入れられ、各地で常にもてもてで、ちょっと波乱万丈な冒険があっても、助かることが最初から約束されている。目的地にたどり着いたら図書館におこもりして、稀代の頭の良さでこれまでずっと謎だったものを軽々と解明、得た知識を「選別」して施してやっていると、いつのまにか己の恩恵によって図書館はお城に、自身は王様になっていて、挙句性格の違う少女二人に言い寄られて「う〜ん、どっちも!」(大ちゃんかヨ、お前は!?)と両手に花、飽きたら妻と子どもに面倒(王国)を押し付けて、昔の女の面影を求めて舞い戻り、ああ俺がいれば不幸にはさせなかったものをと勝手に涙して、故郷に帰れば金持ちの息子。さらにダメ兄貴を(その気はないのに)上回ってしまって、その嫁にまで……、そして行く果ては……。ううううううんんんん(ー"ー)。

 願望充足系が悪いとは言わないけど、こうまで都合がいいと、緊迫感もなければカタルシスもないよ(´・ω・`)。私は願望を充足する小説を求めているのではない、ということなのかも。

 「夢のような」と書いたのにはもう一つ理由があって、ラゴスの思考、思想が、どうも我々現代日本人のものだとしか思えなくて、それが夢の中にいる時の自分の素の思考に対する違和感に似ているように感じられたから。特に知識を「選別」するところ。科学とか医学的な知識を「このぐらいでいいだろう」とか言っちゃうラゴスにげんなり。なぜコーヒー? なぜウラニウムで止める?(p141) それはどうして? あの世界の中で、「そう」である理由はさっぱりわからない。これが日本人の同時代の作家の小説である以上、現実の日本人的な思考(第二次世界大戦の原爆を経験し、「ウラニウム」に忌避するものを感じている?)を思い出さずにいられようか。遠未来の話を読んでいるはずなのに、これではがっかりしてしまうよ。そんな知識を選別できるような(あらかじめ知らなければ不可能だ)、常に自分が他の人々の上にあり、全知である感じにもげんなり。てっきり、「実は現代人」とか、「実はタイムパトロール」というオチがあると思ったぐらい。SF的にすごいことがあるわけでもなかったし。

 超能力に関する説明にも、そういうものがあるという存在感をあまり感じられなかった。普通の都合が良さそうな超能力モノ、という感じ。検索してみると、これはラテンアメリカ小説にインスパイアされて書かれたもの、ということらしいんだけど(未確認)、私が思っている南米的な、マジックリアリズム的なものはなかった。

 あとは、先行して読んでいた『拷問者の影』に、色々と似ていなくもなかったことも災いしたのかもしれない。と思わないこともない。でも、ラテンアメリカ系列で名前が出てくるだけに、ちょっとびっくりするぐらいがっかりしてしまったので、その後お薦めされた『脱走と追跡のサンバ』は読んでみるつもりです。はい。

脱走と追跡のサンバ「脱走と追跡のサンバ」 筒井 康隆
サイズ: 15cm 発行: 1996/12 価格:
ISBN4-04-130508-X
『汚物のあふれるマンホールを通り抜け、こっちの世界へきたものの、やっぱりあっちの世界へ脱出するしかない。境界のゆらぎはじめた現実と虚構の「世界」を疾走する傑作長編SF。(河野典生)』

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去年の今ごろ……

Jul.28,2004 (Wed)

映画『政岡憲三121分(日本アニメーション映画史@フィルムセンター)』

公式サイト

若き日は時代劇俳優でもあった政岡憲三(1898−1988)は、セルを日本に導入し、初のフィルム式トーキー『力と女の世の中』(1932年)を生み出して、国産アニメ近代化の立役者となった。その代表作は、てんとう虫の少女を意地悪なクモから助ける花の物語『くもとちゅうりっぷ』、そして花と蝶のリリカルな世界を描いた戦後アニメの第一声『桜』である。とりわけ戦時下にありながら詩情に満ちた前者は、今も国産アニメの金字塔として揺るぎない評価を得ている。常に優雅さをたたえた政岡の作風は、敗戦後の浮浪児の問題から着想した「トラちゃん」シリーズにも活かされた。なお『茶釜音頭』は可燃性35mmプリント(トーキー)と16mmプリント(無声)をもとに、プラネット映画資料図書館の協力を得て新たに作成された最長版。

  • 難船ス物語 第壱篇 猿ヶ嶋(24分・35mm・白黒・無声)‘30(日活太秦漫画映画部)(画)政岡憲三(原)(脚)清水秀雄(撮)葭屋映治
  • 茶釜音頭(10分・35mm・白黒)‘34(政岡映画美術研究所)(監)(脚)政岡憲三(原)榎本三郎(画)熊川正雄、桑田良太郎、川島正義(撮)原田誠一
  • べんけい対ウシワカ(7分・35mm・白黒)‘39(日本動画研究所)(監)政岡憲三(動)熊川正雄、桑田良太郎
  • フクチャンの奇襲(11分・35mm・白黒)‘42(松竹動画研究所)(監)(撮)政岡憲三(動)桑田良太郎、熊川正雄、土井研二(音)浅井挙曄
  • くもとちゅうりっぷ(15分・35mm・白黒)‘43(松竹動画研究所)(監)(脚)(撮)政岡憲三(原)横山美智子(動)桑田良太郎、熊川正雄、土井研二、山本三郎ほか(音)弘田竜太郎
  • 桜(春の幻想)(8分・35mm・白黒)‘46(日本漫画映画社)(監)政岡憲三(撮)西倉喜代治(音)ウェーバー
  • すて猫トラちゃん(21分・35mm・白黒)‘47(日本動画=東宝教育映画)(監)政岡憲三(脚)佐々木富美男(音)服部正
  • トラちゃんと花嫁(15分・35mm・白黒)‘48(日本動画)(監)政岡憲三(脚)松崎與志人(撮)藪下泰次(動)熊川正雄、中島清、林義雄ほか(音)服部正
  • トラちゃんのカンカン虫(10分・35mm・白黒)‘50(日本動画)(監)政岡憲三(脚)松崎與志人(撮)藪下泰次(動)熊川正雄、安部幸毅、浜桂太郎ほか(音)坂本良隆(声)三枝君子、安斎愛子、村尾護郎
 面白かった! 特に『くもとちゅうりっぷ』と、『すて猫トラちゃん』が、やっぱり最高にいい。

 『難船ス物語 第壱篇 猿ヶ嶋』猿がとにかく動く動く。これは切り紙なの? 表情や仕草が柔らかい上に、引き気味の画面ごと動きまくるのがすごかった。赤ちゃんの声が、コエカタマリン状で、声の圧力が感じられる。無声映画で笑い声を上げるのは、なんだか憚られた。

 『茶釜音頭』一部しか音が残っていないみたい。狸が雲の上を走ったり、梯子に変身したり。子どもっぽいちょこまかした動きが可愛らしいんだが、その作りこみ様に、どんどん異様な執念を感じていって、正直怖くなってくるんだけどね。

 『べんけい対ウシワカ』何か、べんけいすごくアホ。福笑いみたいにくるくる顔が変わる(ひっくり返しても顔に見えそう)。動きはラインナップのなかではおとなしめな気がするけど、弁慶の重量感のある歩き方と、ウシワカのふわふわ感、小僧のちょこまかした動き方とか、全然気を抜くところがない。

 『フクチャンの奇襲』どこが奇襲なのか! ゲタの女子高生(?)とか、当時の生活風俗がしのばれる。一番普通っぽい。

 『くもとちゅうりっぷ』凄かった。テントウムシの羽のちょっとした動きとか(硬い羽の下から、薄い羽がちょこっとはみ出たりするのがカワイイ)、蜘蛛の手足の複雑だけど無駄のない動きとダンディっぷりに、憑かれたものを感じる。そして嵐!(嵐ネタ好きなのね) 絵がイイというのは勿論なんだけど、蜘蛛の散々なやられっぷりが素晴らしい。時々立体が混ざっているように見えるんだけど、どう撮っているんだろう? カラーで見たかったなあ。

 『桜』舞妓サン?がきれい。蝶々の動きがすさまじく細かい。画面の揺れ方とか、計算しつくしているのが……。環境映画だねえ。

 『すて猫トラちゃん』物語的にはトップ。それと、猫が本当に猫っぽいのと、トラちゃんに嫉妬した三毛ちゃんが、本当に拗ねた子どもっぽいのがツボ。時節柄、戦災孤児問題をテーマにしたものなんだよなあと思ってみると、トラちゃんの一生懸命っぷりに泣けてきます。コレ欲しい。ミシンが良かった。カジノロワイヤルの逆襲による紹介が良い

 『トラちゃんと花嫁』気が狂っている。全然意味ないやん!というところで、カメラがぐるぐる回るのが、無茶苦茶おかしい。本当に「やりたかっただけ」のカットを、無理矢理映画に突っ込んでいる感じ。すごく変。なんだけど、猫的にはOK。怖くて厳格なおじいさんが、怒り心頭であるにもかかわらず、ネズミやとんぼのおもちゃに思わずじゃれ付いてしまう仕草とか、アホらしくて最高です。オチも。

 『トラちゃんのカンカン虫』花嫁を見た後だと、どんなものでも中途半端に感じられてしまう。家族的なテーマが希薄なせいか、脚本もやっつけっぽい。バンクでギャグするのは、これまでの流れからするとびっくりするよね(政岡はあまり関わっていないんだっけ)。  

去年の今ごろ……
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