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ざぼんの皮 2003年 12月


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Dec.12,2003 (Fri)

池上永一『ぼくのキャノン』文藝春秋

ぼくのキャノン「ぼくのキャノン」 池上 永一
サイズ: 182 x 128cm 発行: 2003/12/04 価格: ¥1,524
ISBN4-16-322430-0
『オバァらの力で、村は沖縄でいちばん豊かになった。だが、実は絶対に知られてはならない大きな秘密があった-。復帰世代の作家が描く沖縄戦。『別冊文芸春秋』連載を単行本化。』

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 紫色のターバンを巻いた瞬間、ふわりと風が起こる描写が非常に気持ちいい(ちょっと009のマフラーちっく)。池上永一のマジックリアリズムっぽい沖縄は健在。

 池上永一の描く沖縄の人々や風景は、楽しく鮮やかで美しい。でも、そこにイデオロギー的なものや、(『レキオス』もそうだが)陰謀や、外界が絡むと、何か、壊れてしまう。そんな世界なんだろうか。短篇集『復活、へび女』で見せた底意地の悪さも池上永一の味であることは確かだし、その魅力も大好きだ。でも、でもなあ、うーーーん。

 『風車祭』の魅力は、あらゆる登場人物たちが、それぞれ勝手に自分の思惑の通りに動いているだけ(に見える)なのに、「物語」があることだった。『レキオス』も、小説としての出来はともかく、それが魅力だった。群像劇はすごく難しいものだと思う。だからこそ、それが楽しかった。

 私は池上永一の小説が好きだ。池上永一は、ストーリーなしに、人や風景を描写するだけで「物語」をつむぐ事ができる種類の作家だと思っている。だから、池上永一の小説に「陰謀」は必要ない。余計だ。酷い物言いだが、私にとっては。……作者は好きそうだけど(´・ω・`)。

 面白かったかといえば、面白かったよ。多分、物語を純粋に読めば、単純に楽しめる物語じゃなかろうか、とは思う。ただ、どうしても私にはひっかかる。飲み下せないわだかまりが、いつまでも喉に残っている。

 以下、ネタバレ=> 【 最初、池上永一は陰謀を書くのが下手なんじゃないか、と思った。村の秘密が明かされたとき、全然腑に落ちなかったから。伏線もなかった?し、流れ的にもどうにも納得できなかった。コインなんかの話を事前に予備知識として知っている人には良かったのかもしれないが、私にとってはいかにも唐突すぎる。不発弾の話にしたって、言われてみればなるほどありそうなもんだと理解できるのだが、だがしかし。

 それは、自分が全く沖縄戦を知らないに等しいからかもしれない、とは思った。米軍や日本軍に受けた仕打ちを忘れず、コインで復讐を果たそうとする老人たちの姿を、正当なものとして受け入れる事ができなかったから。でも、問題はそんなところにあるんじゃない。

 あるいは、宗教的なものに対するアレルギーなのかも、とも考えた。キャノン様を奉るカマトたちの行動は、『バガージマヌパナス』や『風車祭』で描かれている御嶽信仰とは、また別なものに見えたから。

 終盤、こどもの口から出る言葉、「俺たちは死を恐れない」、これを読んだ時、電撃のように閃いた。違和感の核心。俺「たち」って誰だ? 一体、「何」のための死なら、受け入れられると?

 要するに、勝手に他人の死を決めてくれるなと。村のために、と主要登場人物はしきりに言うけれども、村がそこまでのものなのか、というのが共感できなかった。村って一体何なんだ。そのために不発弾の存在を隠すか? それが正当化されていいものか? 不発弾の存在が知れて、村人が逃げる(実際に逃げるだけ恐ろしいものだったわけだ)ことが、それほど大変なものなのだろうか。(何も知らない)村人の命よりも大切なのか?

 不発弾のことに関しては、正直全然知識はない。でも、時折発見されては住民大避難、というニュースは、今もある。なるほど、沖縄ならばきっと未だにもっと沢山埋まってるだろうな、ということも、容易に想像がつく(実際は、沢山ある場所だから、もっと積極的に駆除されているのかもしれないけど)。そりゃ隠していたらいかんやろう。無責任にすぎる。現実問題として、祟りのせいにして調査が行われない筈はないわけで、ここは的外れな事を言っているのかもしれないけど、埋まっているのを明確に(場所すら把握して)知りながら、事実を知らせず、勝手に命を預かって、勝手に責任を持って、キャノン様のせいにして、そんな権利がこの3人にどこにあるというのか。これが秘密って……。あかんやろう。

 ……どうなのかなあ。子供たちが、それを叱ってやるべきだったんじゃないかなあ。だったら、納得したのに。

 「村の人たちまで巻き込むわよ」「俺たちは死を恐れないんだ。俺たちは死んだらデイゴの木ににあるんだ。だから生きているうちは村に尽くすんだ」

 「俺」ならば、ここまで引っかからなかったかもしれない。この時点で村人の大半は村を去っている。残っているのは老人たちのみ(男衆、寿隊の登場はこの直後)。自分を含む特定の集団に、死を許容(強要)させる理由。「だから村に尽くす」……死んでデイゴの木になるから? 納得できねえ……。お前だけならいいよ。「たち」って……。

 あとなあ、こどもたちが最初から他の世界などないように振る舞う事。排他的な閉塞感にぎちぎちに支配されている事。いつまでもいつまでもこのままの村で、姿でってのは美しいかもしれないけれども、生きていることは変化し続けることだ。変化の拒絶は、死にも等しいと思う。それでいいんだろうか。

池上永一日記トピック

  • 『バガージマヌパナス』

    「バガージマヌパナス」 池上 永一
    サイズ: 182 x 128cm 発行: 1994/12 価格: ¥1,359
    ISBN4-10-401901-1
    『第6回日本ファンタジーノベル大賞大賞受賞作。なまけ者、でも誰よりも島を愛する元気な美少女綾乃が神様のお告げを受け、ユタになるまでをユーモアあふれる文章に描き、明朗闊達な快作と絶賛された、新しい沖縄物語。』

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  • 『風車祭』

    風車祭(カジマヤー)「風車祭(カジマヤー)」 池上 永一
    サイズ: 16cm 発行: 2001/08 価格: ¥1,067
    ISBN4-16-761502-9
    『島を彷徨う少女の魂に恋した少年、九十七歳の生年祝い=風車祭を迎えようとするオバァ、六本足の豚の繰り広げる壮大なファンタジー』

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  • 『復活、へび女』

    あたしのマブイ見ませんでしたか「あたしのマブイ見ませんでしたか」 池上 永一
    サイズ: 148 x 105cm 発行: 2002/04 価格: ¥552
    ISBN4-04-364701-8
    『寓話と現代文学が美しく融合した作品「カジマイ」ほか、みずみずしい感性が紡ぐ、切ない八つの物語。著者初の短編集。』

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  • 『レキオス』

    レキオス「レキオス」 池上 永一
    サイズ: 182 x 128cm 発行: 2000/05 価格: ¥2,000
    ISBN4-16-319210-7
    『舞台は西暦二千年の沖縄。謎の将校、キャラダイン中佐は首里城を爆破して伝説の地霊レキオスを復活させ、米国本土に宣戦布告する』

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  • 『夏化粧』

    「夏化粧」 池上 永一
    サイズ: 182 x 128cm 発行: 2002/10 価格: ¥1,524
    ISBN4-16-321360-0
    『ライバルに見守られながら、井戸に飛び込むシングルマザーの津奈美。光と闇が逆転する「陰」の世界で、7つの「願い」を集めなければ息子の裕司は戻ってこない。夏至の日、星見石の上で何が起きるのか?』

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去年の今ごろ……
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