勇んで行ってみたら、確かに佐藤哲也だった。日記があったのね、嬉しい(^-^)。
しかも、『沢蟹まけると意志の力』の番外編まで読めますですよ。『イラハイ』は未読なのだが、『沢蟹まけると意志の力』は、かなりお気に入りだ。kashiba邸からの帰り道で話にのぼって、「淡々とした島本和彦みたいな感じ」と説明したのだが、既読のmutsuさんは、首をかしげながらも頷いてくれたものの、総統は判ってくれなかったのだった(;_;)。
というわけで、試し読み推奨(--)b。
昨日、佐藤哲也に触れたばかりで、タイミングが良すぎるのだが、佐藤亜紀が新潮社から版権を引き上げたらしい。読んでいて、なんだか、胸が悪くなってきた。
佐藤亜紀の『バルタザールの遍歴』や『戦争の法』は、非常に完成度が高く(特に『戦争』)、「古典」になってもいいくらいの小説だと思う。確かに、あの翻訳的とも言われる硬い文体と、重厚な内容は、とっつきにくい印象を与えるようで、「売れる」小説かといわれると、首を捻ってしまう。……ので、一概に新潮社(というよりも、担当編集者、編集長、個人?)についてどうこう言うつもりはない。売れるかどうか、ということは、企業にとっては、非常に大切なことだろうから。利益のあがらない本を、いつまでも維持販売していく義務はない。でもね、あれほどの作品をっ!?と思うわけですよ、やっぱり。
私はリアルタイムで追っているわけではないので(『バルタザール』『戦争の法』を読んだのは、97年秋ごろか?)、実際にこれらの作品についてどのような評価がついたのか、「文学」方面からはどのように見られていたのかというのはよく知らない。でも、『戦争の法』などは特に、いわゆるファンタジーというレーベルからははみ出しまくっているし、かといって、何といわれると、よくわからない。敢えて言うなら社会学系SF?(シミュレーション・ノベル? アゴタ・クリストフは何に分類されているんだろう?)とか、まあ、要するに、既存のレーベルなんて、全く佐藤亜紀にとっては無意味でしかないのに、「ファンタジー・ノベル大賞」出身ということが、「文学」界に進む妨げになってしまうなど、馬鹿馬鹿しいとしか言いようがない。
ただ、実際にどの程度出自が今の状況に影響しているのか、なんていうことは証明のしようがないんだけど。例えば、大賞受賞者の中では傾向が比較的(<ここ重要)似ているんじゃないかと思う酒見賢一は立派にやっているし、池上永一だって、直木賞にノミネートされた(芥川・直木は土着ものに弱い?)。結局のところ、時の運なんてものも絡むわけで、でも、それって「売り方」だよなあ。酒見賢一は第1回で意気があったんだろうけど、やっぱりアニメ化も大きく影響しているような気がする。アニメ化がなくなったのは『バルタザール』の回からだということも、うーん、あれを映像化するのは確かに……(^^;。
ファンタジー・ノベル大賞は、ファンタジーという語の定義を極大まで広く捉え、毎回全く違った傾向の作品を、純粋に作品の完成度と著者の筆力だけで選ぶという間口の広さが魅力だった。でも、売る側にそういう寛大さと、柔軟さがなかったということなんだろうね。だから、後が続かない。城戸光子も、佐藤哲也も、実力があるのに……。
『鏡の影』と『日蝕』については、『日蝕』を読んでいないので、わからん。
とりあえず、文庫本のダブリは結構大量に、既にあります。布教用が。でも、こんな形で……。某書店にあった、『1809』も押さえておくべき?(;_;)
まあ、売れる/売れない、食える/食えないの差は、実力に加えて、むしろそれよりも運が必要なのだろう。時の運、人の運、色々。そして、運良く食っていけるのは、幸福なごく少数にすぎない。それから、きっと根性。根性出して、頑張って欲しいなあ。
(承前)
さてさて。各所で話題沸騰の佐藤亜紀版権引き上げ問題ですが、うーん。
結局、本なんて商品なんだよな。当り前だけど。売れにくい商品を敢えて売るのは大変だし、自社内で競合してしまうようなら、より売れそうなものを選ぶことになるんだろう。一般論。
売れるか売れないかというのは、むしろ、実力よりもプロデュースの問題なんじゃないかと思ってしまうので、そこら辺で、新潮社のやりかたのまずさがなあ、と思ってしまう。ただ、佐藤亜紀の本は、バカ売れする種類のものではない。だからこそ、確実に読まれるべきところへ、アプローチすべきではなかったのか。売れる・売れないで勝負してしまうと、かなり分が悪いと思うのだ。でも、作品そのものの力はあると思う。それで勝負はできると思う。そういう作品そのものに対して正当な評価をつけてくれるところ……、言ってしまえば、要するに純文学とかそっち方面になるんだろうけど、そちら側に行って、価値をつけてもらったほうが良かったのでは。
とは言っても、私は純文学とエンターテインメントの差というのがよく分からなかったり。じゃないな、上の話が、私的純文学とエンターテインメントの違いなんだな、うん。多分、世間的には間違っているんだろうけど。
まあ、とにかく。この事に関して、自分が(自分の自己満足のために)できることは何だろう? 『バルタザールの遍歴』はまだ新刊書店でも買えるところもあるらしいので、こちらは見つけ次第購入。今までも新潮文庫作品は、新刊で2セット買っているんだけど(^^;。とにかく断裁させないで、一冊でも多く古書流通させることが先決か。
それから、新刊書店でとにかく注文してみる<迷惑だからやめましょう。新潮社に直に注文してみる<(同左)。
んで、とにかく感想を書くことなんだろうなあ。書きにくいんだわ。圧倒されちゃって、何も言えなくなってしまう。そういうところも、佐藤亜紀の不利なところなんだろうけど。
とりあえず、四谷ラウンドから出ているエッセイ集3冊を買いに行きますか……。
『日蝕』と『鏡の影』の類似性については、まきことらむこのまきば、INJUSTICEなど。佐藤亜紀の方が読んでいる人が限定されている分、佐藤亜紀寄りの意見が多いのだが……。
寮美千子さんからCD『ノスタルギガンテス』が届いた。有り難うございます(;_;)。
さっそく聴いてみる。プログラム的には、2度のリーディング(1999.5.17、1999.9.26)と同じなのかな? でも、効果が……。気が滅入っているときでなくて良かった。トリップできるぞ。心臓がばくばくしてくるよ。思いっきりダウナー系。
凄いと思うのは、言葉が聞こえることですな。意味がこもった言葉が、脳味噌に直接響いてくる。『ノスタルギガンテス』という絶望的な物語の、芯を詰め込んだ言葉が。
正式版が発売されるそうなので、聴いてみれ(T-T)。
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=>再読
「ぼく」はかつてネクストライフ・コーポレーションという会社に勤めていた。うようよと街中をうごめく陸クラゲや、それを食らう風船エイなどの人工生物を創った会社だ。正確に言うと、開発したのは「ぼく」らしい。その会社はダイヤモンドリングという巨大な建造物の中にあったのだが、ダイヤモンドリングが崩壊した時に、それら創られた生き物たちも逃げ出したのだ。
「君」は小さな頃、キチガイ科学者になって怪獣を作るのが夢だった。その夢を、近所のお兄ちゃん「機一郎」と語り合ったものだった。「機一郎」は学校を卒業すると、会社に入って、研究職に就いた。そして、本当に怪獣を作ってしまい、会社を辞めた。
まるで、「ぼく」のように。
そして、「機一郎」は巨大なクラゲとなって、焼き殺されてしまった。「機一郎」は自分の研究を守るために、自分自身を怪獣にしてしまったのだ。
……延々と粗筋(?)を書いてしまったが、読み始めたときは「ゆるやかな破滅物」と思ったのだが、とんでもない(いや、当たらずとも遠からず、なんだけど)。神林長平の初期を思わせる、観念SF。
繰り返される夢、繰り返し起こる既視感。現実が夢に飲み込まれ、夢だと思っていたものが現実となる。見ていたものに見られ、見られていたものを見る。でたらめに再生される記憶。永遠に続く夢。どれが本当の事なのか、何が事実なのか、そして「ぼく」は何なのか? 「ぼく」が「君」になり、「君」は「ぼく」の一部になる。あるいは「彼」に。
夢また夢のその先は、永遠に醒めることのない現実という名の悪夢……、なんだけど、うわー、何を言ってもネタバレになる種類の小説なので(既に言いすぎという感も(^^;)。ディックが落語の台本を書いた感じというのは上手いかも。とにかく読め。買って良かった(^^)。
土曜日、ちょっと横浜まで足を伸ばした。川崎よりも規模も大きく、人も多いが、東京の繁華街よりかはゆっくりできるので。新宿も渋谷も、用事だけ済ましたらさっさと帰ってしまうんだよなあ、未だに。多分地下街じゃないからだと思うんだが。梅田が基本?(--;
友人の結婚式があるので、珍しくお洋服なんぞを見ながら、古本屋もチェック。と、あるリサイクル系の古本屋に行ったときのことだ。店の入り口横に、いかにも整理中のハードカバーが括られて、4段ほど積み上げられていた。まず目に付いたのは、谷甲州『惑星CB-8越冬隊』。ハードカバー版は初めて見た。……もしかして、『35,000キロの墜死』もあるかも!?と思って、古本の束を上から順に見ていく。古めの日本SFと海外SFが2:1くらい。しかも、割と美本。結構値がつきそうな本が多い……のかもしれないが、私には分からんやねえ〜と、呑気に見ていた。と、
梶尾真治『さすらいエマノン』がっ!?
興奮しつつ、さらに下の束へ。
山尾悠子『仮面物語』がぁっ!?
……、鼻血が出るかと思った。
一人で大興奮しつつ、レジの店員さんに「す、すいません、あの束の中身買ってもいいですか!?」と尋ねる。が、いかにもリサイクル系の本に興味なさそうな店員さんは「あの本は、別の店に持っていくものなんですよ。伝票とか切っちゃったんで、店長がいないと抜けません」と、すげない(;_;)。しかも店長さんは別の店に言っていて、戻ってくるかわからないらしい(T▽T)。うぎゃー!! とりあえず、取り置きをお願いして、帰宅。……、いや、何しろ、気もそぞろだったので……。
まんじりともせず夜を過ごし(言い過ぎだが、寝付きにくかったのは、確か(^^;)、10時起床。すぐに店に電話を入れると、これも気のなさそうな店長さんが「抜いておいておきますので、来てください」と言ってくれた。というわけで、猛ダッシュで、2日連続の横浜。
「じゃあ、これは両方とも100円均一の店に持っていく本なので、2冊で210円ですね」
大血風。
<って、使い方これでいいのかなあ?>kashibaさん(^^;。
頭がくらくらするよ……。値段はともかく、このタイミングとか、神がいるのかも〜。つーか、申し訳なさすぎ(--;。色々と。
気をよくしたのか、春物のコートとか買ってしまい、福引き券が2枚付いてきたので、福引き引いたら、1つは参加賞だったんだけど、2枚目が1000円のお買い物券だったので、さっそく春物セーターをもう一着買って、ラーメン食べにいったら、吉村家はスープ切れで閉まっていて、横浜家の塩はゲロマズで、川崎に移動してもう一着トレーナーを買って、古本屋でも買いまくり。
タイトルはパームシリーズ『オールスター★プロジェクト』で、コンゲームに使われた映画の原作本と同じだが、内容は全く違う。主人公はベトナム帰還兵ではないし、王子様も出てこない。それが、まるっきり著者の生い立ちそのまんま。先に生い立ちを読んでしまったのは、失敗だったか(^^;。メインの事件は創作だと思うけど(笑)。
そう思いながら読んでいたので、子供との細かいやり取りや、
「……君って、もしかしてすごく、おっちょこちょいじゃない?」
「やっぱりそう思う? いつも何かをしてみてから驚くの」
などというやり取りに、いちいち心和んでしまった。
この人は、大長編の構成力もさることながら、こういうささやかな心の機微の書き込みかたが上手くて、安心して読める。バックグラウンドが強烈だからなのか、とてもおおらかだし。シリアスとギャグとのテンポの切り替えも心地よい。
うわ、どう書けばいいんだ?(--;
ライトSF風ハードSF風観念SF風SF……、かな? そんな感じ。つーか、ずるい(笑)。
新入社員の「ぼく」に、入社した途端、火星へ鬼退治に行くようにとの辞令が下った。「ぼく」の会社は、火星へ通じる「門」を使って火星開発を行う二つの会社の片割れだ。鬼というのは、元「ぼく」の同期で、なぜか会社を辞めてから火星で鬼になってしまったらしい。「ぼく」は何とか鬼を退治したものの、今度はタヌキに感染した疑いがあるということで、突然解雇されてしまった。
タヌキというのは、「門」ができてから、人間社会にまぎれこむようになったもので、元は火星の自動機械群だったらしい。それらが「門」の影響で進化し、人間に化けるようになったのだ。
「ぼく」の再就職した会社はタヌキの会社だった。「ぼく」以外の社員全員がタヌキ。タヌキが会社の真似をしているのだ。そこで、またもや「ぼく」は「カチカチ山駅遺跡対策」などというわけのわからない仕事を押し付けられて……。
とかいうのが冒頭。それ以降は、揺れる地面を必死になって進んでいくような感覚。真っ直ぐ進もうとしても、地面そのものが揺れているので、進みようがない。その変化についていくのがやっと(^^;。このあたりは、『クラゲの海に浮かぶ舟』の方が、スムーズかも。後半ぎくしゃくしてくるような感じがある。
けど、こんなにSFだったとは……。表紙と冒頭からは想像がつかないっすよ。びっくりした。
ともあれ、この振り回されかたも、かなり好み。面白かった。